43番札所、源光山 明石寺

今日はほんとうは35kmほど歩いて、内子町の龍王温泉に泊まろうと思っていた。
ところが電話をかけても通じず、どうやら宿をやめてしまったらしい。
今回は佐賀温泉といい、この龍王温泉といい、温泉にツキがない。
龍王温泉がダメとなると、明後日に鴇田峠を越える都合から、
今日はそんなに歩いても意味がない。
明日の宿まで歩く距離が50kmというのは確定だからである。
龍王温泉に泊まれれば、明日は観光しながら15kmを歩こうと思っていたのだが。
結局、その間に温泉宿はないのだが、ちょうど25kmの場所に大洲市街があり、
ここに「臥龍の湯」という、宿ではないが温泉があった。
そこでのんびり浸かろうと決める。
ここにきて、もはや温泉モードは替えようがないのである。
そうと決まれば、さっそく臥龍の湯から一番近い宿に予約の電話を入れた。
16時前には宿に入って、いそいそと臥龍の湯へ。
そして真っ先に向かったのは、マッサージの予約受付。
そう、目的が温泉というのもさることながら、
マッサージも大きな目的のひとつである。
ここまで、マッサージはまだ1回しか受けてない。
ちょっと大きい市街ではマッサージを受けようとしていたのだが、
四国はみな18時くらいには店じまいで、間に合わないのである。
臥龍の湯でやっているマッサージは「足つぼマッサージ」。
疲れてるのは足なので、まさにドンピシャである。
が、しかし、
狭いスペースに囲いだけ立ててやってるところに首を伸ばしたら、いきなり、
「すいません、今日はもう予約でいっぱいで……」
――なんたるツキの無さ。
思わず、あきらめ切れずに食い下がろうかと思ったが、それでどうなるものでもない。
隣の囲いを覗くと、おじさんが一人ぽつんと座って待っている。
GWだから、客が多いのかもしれない。
あきらめきれないまま、とはいえどうしようもないので、
――身体の疲労は温泉で癒してやる。
とばかりに、ずっと温泉に浸かってた。
1時間以上浸かってただろうか。
さすがにこれ以上は明日に響くと思い、上がって帰ろうとしたときに、
なんとなくマッサージの囲いを覗いたら、
なんと、さっきのおじさんがまだぽつんと座ってるではないか。
思わず目が合って、じっと見つめてしまった。
そして、ふと気がついた。
まさか……
「――いらっしゃい」
やっぱり。
このおじさん、待ってる客じゃなくて、マッサージをする先生である。
んで、よくその囲いを見回すと、「琉球整体」って書いてある。
ここには「足つぼマッサージ」と「琉球整体」の2つのマッサージ店が入っていたのである。
でも、一見まったく分からない……
どう見ても、「琉球整体」は「足つぼマッサージ」の待合室である。
知らない客は入り口に近い「足つぼマッサージ」で予約いっぱいと言われれば、
そのままあきらめて帰ってしまうだろう。
かくして、足つぼは満杯、琉球はガラガラである。
なにはともあれ、マッサージを受けられることとなり、
これまたよく見ないと気づかないようなところに貼ってあるコースメニューから、
とりあえず一番長かった50分を選択。
懇切丁寧に背中と足を解してもらって、その後ひざ下と足裏のオイルマッサージへと続く。
そして首、頭と、マッサージは続く……。
途中から気付いてはいたのだが、とにかく続く……。
そして、終わったときは、なんと1時間半以上たってた……。
50分と言ったんだけど聞き違えたのかなぁ、などと思いながら、
とはいえ、とても丁寧で、身体もかなり解れて気持ちよかったから、
高い値段でも払わなきゃなぁ、などと考えていたら、
「4千円です」
――50分の値段ではないか。
いや、時間が長かったから、と言ったのだが、
「はい、大丈夫です」
と。
思わず余分に払おうかとも思ったのだが、
これもお接待と同じで、気持ちを無駄にしてはいけないと思い直し、
納め札も持ち合わせていなかったが、素直に4千円だけ置いて帰ってきた。
感謝感謝である。
かくして、今日も心を洗われる遍路である。
宿:ビジネスホテルだいいち