37番札所、岩本寺。

寒い、寒い、雪である。
岩本寺まで、まだ30kmはあったので、朝7時に宿を出た。
朝から天気はいまひとつだったが、しばらく歩いてると、
いきなり雪が舞い、あっという間にあたりは吹雪になった。
たまらずに、目の前の喫茶店に退避。
そこでたまたまお客だったおばさんに、
「そえみみず遍路道」というのを教えてもらった。
高速道路の建設で2年ほど通れなかった遍路道が、
新たに整備されて去年の暮に再開したのだそうだ。
そして丁度、入った喫茶店の脇から入っていくという。
これはツイてると思い、まだ再開して間もない
その道から行くことにした。
喫茶店をでる頃には、空には太陽が。
ツイてる時とはこんなもの。
意気揚々と人跡多からぬ道を歩き始めると、
前方で、じっとこちらを見つめてるおばあちゃんが。
「寄ってきなぁせ、お接待させておくんれ」
最近は、さすがにお接待をして下さる方は、
すぐわかるようになってきた(笑)
おばあちゃんに連れられて小屋に入ると、
これまたおばあちゃんが4人いて、韮を束ねていた。
「あたしゃ、この人たちが仕事してくれるから、お接待をしとるんよ」
嬉しそうにそう言うと、真新しい「そえみみず遍路道」の
パンフレットをもってきて、丁寧に道順の説明を始めた。
パンフレットの中には、暮れにとった開通式の写真があって、
このおばあちゃんも写ってた。
端には、さっき喫茶店でこの道を教えてくれたおばさんもいた。
どうやら、あのおばさんも、この道再開の立役者の一人らしい。
一通り道順の説明を終えると、
これはみんなにあげとるんよ、団体さんにはあげんけどね、
と言いながら、お茶、お菓子、飴、みかんを持たせてくれた。
そして最後に、
「これはあたしが作った巾着、1個持ってきな。
あと、むこうのばあちゃんの死んだ息子の嫁が作ったフクロウ。
これ1個、リュックにつけていってくんれ」
名前があがったおばあちゃんが、顔をあげて微笑んだ。
このフクロウをつけてお遍路を回ることが供養なのだろうな、
と思いながら、最初に目があったフクロウを1つ、つまみあげた。
これからは、お大師様とフクロウと3人連れの遍路である。

宿:美馬旅館 歩数:43,181